海外でも高い評価を得ている駒形克己の絵本。1ページ毎に紙の種類を変えたり、切り抜きをしたり、ページを開くたびに触覚が変わるいう造本のこだわりにより物語の内容だけに焦点が当てられた絵本とは違った楽しみがある。
駒形克己の絵本は、ほぼ手作りで制作されているため、大量生産では出来ない作品が数多く出版されている。
手にした人が魅了される駒形克己の手がける絵本
オリジナリティあふれる絵本、紙を用いたワークショップで世界中からオファーを受けるなど、目覚ましい活躍を見せる造本作家、駒形克己。駒形克己の手がける絵本は、見る、読むという表現よりは、体感するという表現の方が合っているかもしれない。
駒形克己の手がける絵本を手にした人からは、優れたデザインとしかけに感嘆の声が上がる。駒形克己の絵本は、絵本の概念を超えた「紙のアート」とも評されている。読む人の心模様によって、感じ方、捉え方は様々だ。ページを開くたびに自分の中に眠っている様々な感情を呼び起こしてくれる。
造本作家として活躍する駒形克己は、「アートとも呼べる繊細な絵本だからこそ、折れる、破れる、壊れる…紙との付き合い方は、実際に手で触れながら知っていってほしい」と言う。これは、絵本の制作に注力している彼だからこそ言える言葉であり、長年絵本制作に携わってきたことへの誇りと手がけた作品に自信を持っているからこその願いなのだろう。
仕掛け絵本
絵本は、絵本作家やイラストレーターだけでなく、グラフィックデザイナーが描く名作も数多くある。グラフィックデザインの手法を使って、視覚によるコミュニケーションとして絵本を制作する、駒形克己もその一人で、一般の版型や用紙にとらわれないなど、日本では珍しいスタイルで制作する無二の作家。
造本作家の駒形克己しかできない仕掛け絵本。それは、触覚も楽しめるように紙の質感にもこだわり、一つずつ丁寧に制作された量産不可能な絵本。切り抜きや切り込みを入れたり、ポップアップにしたり、既成概念にとらわれない構成で作られるページは、開くと想像を超えた世界が広がる。
例えば、素朴な仕組みと洗練されたデザインから生まれる人気の名作「Little tree」は、シンプルに見えるが、隠された工夫がされていて、陰影と美しい紙面の空間が楽しめる。ページ毎に違う紙を組み合わせて生まれた印象の違うページが、開く度に広がる。豊かな視覚表現と造形的な思考、そしてその美しさに感動する。
心にしみる絵本
色の組み合わせや切り抜きなど様々な技法を使うことで視覚的に展開された作品、しかし、デザインと同じくらい魅力的な駒形克己が語る言葉も注目したい。例えば作品の「なみだ」では悲しい時に流した涙の行方が語られる、読み進んでいくと、涙がたどり着いた先が分かり、悲しみが和らぐ。また「小さな木」というタイトルが付けられ、木の成長を人の一生になぞらえたストーリーで読者を勇気づけてくれる、「Little tree」など、駒形克己の読者に寄り添う優しい言葉が心にしみる。